新・中間省略登記の会社分割への応用を実現

ポイント!
新・中間省略登記は売買等の不動産取引だけでなく、会社分割の場合も応用可能である事を理論レベルのみならず実務レベルでも実証

2012年9月20日、さいたま地方法務局(本局)から一通の回答書が届いた。
この回答は弊事務所が提出した「会社分割に掛る第三者への直接の所有権移転登記の可否」という内容の確認(照会)書に対して出されたものだ。
結論はもちろん「可」である。
つまり、「会社分割を原因として第三者へ直接所有権移転登記ができる」ということだ。言い換えれば、「新・中間省略登記」は売買だけでなく会社分割の場合でも使えるという事である。
これについては実例もなく、拙著「新・中間省略登記が図解で分かる本」(住宅新報社)でも「理論的には可能」と記載するに止まっていた(p.160)。

しかしここへきて、某企業の組織再編にあたってこれを実現する必要性が生じた。

(事案の概要)

syoukei01.jpg

株式会社Aと株式会社Bは、B社がA社からA社のX事業部門に属する権利義務を承継する旨の吸収分割を行う契約をした。
同時にB社はC社との間でC社を存続会社、B社を消滅会社とする吸収合併契約を締結した(法人税法上適格分割とするためのスキーム構築上こうする必要性が生じた)。BC間の合併の効力はAB間の分割の効力が生じた後に発生することとされている。

即ち、X事業部門に属する権利義務はA社(分割会社)→B社(分割承継会社/合併消滅会社)→C社(合併存続会社)と順次承継されることになる。
X事業部門に属する甲不動産も同様の運命をたどる事になるから、B社は甲不動産を取得し、B社には不動産取得税3〜4%(一定の要件を満たす場合は非課税)及び登録免許税1.5%(平成26年3月まで)が課税されることになる。

しかしこの場合のB社の甲不動産取得・所有は瞬間的・形式的なものであるため、これらの税負担を強いられることを不合理と感じるのは不動産売買の場合と全く異なるところはない。
そこで不動産売買のシーンで活用されている新・中間省略登記の手法をこの場合にも応用できないかと考えるのは当然の帰結である。

我々は本件の当事会社から弁護士を通じて、新・中間省略登記が会社分割に応用できるのではないかという相談を受けた。理論的には可能と理解していたことは前述したが、実務上は前例がなかった。
そこで登記申請手続を円滑に進めるため管轄法務局(今回の不動産の所在地の法務局)であるさいたま地方法務局に予めこれが可能であることを確認するための書面を提出した。そして可能である旨の回答を得る事ができた。それが冒頭に引用した回答書である。
前例のない手続きであるため結論までには若干の日数を要したが(上級庁である東京法務局へ照会したとも聞いている)、明確に文書で回答を受けることができた事は実務上も大いに意味のあることであると考えている。

(新・中間省略登記による解決)

syoukei02.jpg

因みにこの時我々が行った確認の内容はおおよそ次のようなものである。

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今回のスキームは、所有権移転原因となる契約(会社分割契約)に「所有権を第三者に直接移転する」という特約を付すことによって第三者に所有権を直接移転させるというものだ。

これは私法の大原則である契約自由の原則から当然有効な契約(特約)であり、民法も第三者のためにする契約としてその有効性を承認している(537条)。

この特約を付した売買契約に基づく所有権移転登記に関しては、平成19年1月12日付法務省民二第52号によって、第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者へ直接所有権を移転する登記の登記原因証明情報の例が示されている。

これは当該契約が契約自由の原則(及び民法537条)から当然適法・有効であることを前提とした上で登記原因証明情報の例を示したものに過ぎず所有権移転原因となる契約を売買契約に限定する趣旨ではもとよりない。

即ち、会社分割契約に同様の特約を付して第三者に所有権を移転させること及びそれに伴う所有権移転登記も契約自由の原則から当然適法・有効であると解すべきである。
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2012年10月2日、会社分割を原因とする新・中間省略登記は弊事務所からさいたま地方法務局に申請し、同9日登記は完了した。



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