実録不動産トラブル#15 直近の詐欺被害事例〜転売・仮登記という新たな手口〜

20160801_01.jpg【概要−大手が狙われた典型例】
またしても詐欺事件である。そしてまたしても被害者は大手である。しかも手付詐欺ではなく、売買代金全額数億円を詐取されている。なりすまし、権利書・運転免許証・印鑑証明書の偽造という手口。東京都内の住みたい街ランキング上位常連の街の物件。
本「フクダリーガルニュース」の第1号で取り上げた「詐欺の対象になり易い条件」5つに全て該当するという典型的な事例だ(5つの要件は弊事務所HPにも掲載)。

【新たな手口=転売・仮登記】
ただ今回特徴的だったのは、転売の形式を取っていたところだ。
現所有者Aから売り主B社が一旦買取り、仮登記まで終わらせた上で被害会社Cに転売を持ちかけて来たとの事だ。
その仮登記自体が偽造書類によるニセの仮登記だったわけである。A→B→Cという経路である。当然C社は某司法書士に登記を依頼した。
その時点でA→Bの仮登記は完了していた。そちらには別の司法書士が関与していた。

【転売の場合の注意点】
こういった転売のケースで重要なのは、AB間の取引が間違いなく真実行われていたかどうかの確認をC側がきちんと行うという事だ。これは仮登記があろうがなかろうが関係ない。
仮登記でなく本登記がされている(つまりBが所有者としてすでに登記されている)場合でも、登記されてからの期間が短い場合(2年くらいまで)はその確認(登記の真実性の確認)が必要だという事はこれまで何度も指摘してきたところだ(フクダリーガルニュースのバックナンバー参照の事)。

【危険性の認識の温度差】
実は今回の被害会社の法務部にもフクダリーガルニュースは配信されており、今回の取引の概要を聞いた法務担当者は現場に対して慎重に行う様に警告していたとの事だ。
しかし現場はベテランの仕入れ担当者で、法務部のコントロールの及ばないところで取引をしてしまい今回の被害に合ってしまった。
土地仕入担当者はこういった事件を決して他人事とは思わず、少なくとも典型的な詐欺物件の要素位は頭に入れておいてほしいと思う。
また、先日某ノンバンクの方も話していた事だが、被害に会った経験があっても時間がたつと「のど元過ぎれば」でその危機感が薄れてしまい、その頃にまた被害に会ってしまうのだという事も肝に銘じておいて欲しいところである。



関連記事一覧
  • 実録不動産トラブル#16 後見人が不動産を知らないと大変!
  • 実録不動産トラブル#15 直近の詐欺被害事例〜転売・仮登記という新たな手口〜
  • 実録不動産トラブル#14 登記の真実性の確認方法3〜前所有者への聴取は難しい〜
  • 実録不動産トラブル#13 手付詐欺!(最近の詐欺事例その2)〜国有地売り払いにまつわる「おいしい話」は未だなくならない〜
  • 実録不動産トラブル#12 自分の不動産が知らない間に他人の名義に!〜不動産オーナーも詐欺の被害に!〜
  • 実録不動産トラブル#11 最近の詐欺事例(なりすまし、偽造)〜K市の土地の売買代金4億円を詐取された事件〜
  • 実録不動産トラブル#10 売主の社長がニセモノだった!?〜会社の登記簿も信用してはいけない〜
  • 実録不動産トラブル#9「不動産売りますか」「はい」では売買無効!?〜高齢者の意思能力の問題は軽く見てはいけない〜
  • 実録不動産トラブル#8 −危ない取引は法務局で決済するのが安全?〜時代は変わっている〜
  • 実録不動産トラブル#7 〜登記を信じて訴訟に巻き込まれた!−相続登記の無効〜
  • 実録不動産トラブル#6 登記の真実性の確認方法2 最も確実な証拠は?
  • 実録不動産トラブル#5 登記の真実性の確認方法1
  • 実録不動産トラブル#4 危険なのは売買だけでなく相続も!
  • 実録不動産トラブル#3 登記を信じると危険!
  • 実録不動産トラブル#2 買取られて間もない不動産はここに気を付けろ!
  • 実録不動産トラブル#1 不動産詐欺事件はここに気をつけろ!
  • メールニュース登録

    お名前
    Email
    詳細

    不動産リスクコンサルティング

    書籍